掻き揚げの煮浸し

台風一過とはよく言ったもので涼しく過ごしやすい。朝晩は少し寒いほどだ。
台所でふと足元を見るとコオロギがじっとして居る。このままでは踏んでしまいそうなので両手で包むようにして掴み玄関から、逃がした。

自転車に乗っている。ライトがついていないのでハンドルに懐中電灯を付けようとして鞄の中を探したが見つからない。丁度そばを通りかかった夫婦とその子供二人が立ち止まり、どうしたんですかと聞く。あぁ、それなら沢山あるじゃないですかというので、もう一度探すとあれ程探したのに数本が出て来た。しかしどれも自分のものではないしいつも使っている肝心なものがない。

電灯は諦めて帰路につこうと駅に向かうが、奥さんが一緒に行こうと言う。旦那と子供たちはどうも別に帰るようだ。近くの駅まで一緒に歩きながら、この夫婦は離婚しており親権は父親にあるのだな、今日は偶々子供に会っていたんだろうと思っていると直ぐに駅に着き、改札で定期券を駅員に見せる。改札には機械も何もなく、ただ一人駅員が立っている。

構内に入ると列車がひな壇のように手前から奥に順に何列も並んでいる。なかには特急もある。これに向かうように置かれたベンチで電車を待っていると、奥さんの上司と思しき初老の男が話しかけてくる。涼しくなりましたね。昨日まで暑かったのに今日は寒い位だ。ねぇ、そうでしょう?

満面の笑みを浮かべて喋る男は時折笑顔の中にいやに冷たい目付きを見せるのが気になる。列車が来たので自転車を乗せようとするが、女性駅員に今は自転車を乗せてはいけない時間帯だと言われる。奥さんが駅員に取り入って暫く話していたがどうも話をつけたようだ。乗せろという合図を送ってくる。自分は女性駅員に済みませんねと礼を言うと、その駅員は途端に困惑し怒り出す。奥さんはどうもこの駅員を騙していたようで、自分のこの発言で台無しにしてしまったようだ。

憤懣やる方のない風情の駅員を宥めながら二人して逃げるように駅舎の二階に上がる。
二階は旅館になっていて、広く良く磨かれた廊下がありその両側には畳敷きの明るい広間が見える。

廊下に置かれたテーブルに座るとメニューが置いてある。この旅館の若主人の創作料理だ。どれも美味しそうだが値段が高い。躊躇していると最後のページに旅館の従業員が企画した五百円ほどの日替わりメニューがある。今日は「掻き揚げの煮浸し定食」だ。あぁ、こんなので良いんだよ、美味しそうじゃない。これにしようよと奥さんに話しかける。

* * *

こうやって夢を書き出してみると随分と取り留めのないものになる。
映像的には色彩も含めていつも異常なリアルさがある。筋書きはこんな奔放さの夢が殆どだが時折しっかりとした話の場合もある。以前は紙にペンでメモをしていたが、最近は枕元にICレコーダーを置いて忘れないうちに録音している。後で何かしらの意味が分かることもある。

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