いま住んでいるのはいささか古い一戸建てだが、そろそろ新しいところに住みたくなった。
ここを引き払ってもう少し狭くて良いから落ち着いたところへ行きたくなってしまったのだ。
昔は近所づきあいも今に比べれば濃厚でおかしな人もおらず住みやすかったが、時代が進むにつれて人も変わり、周囲の環境も変わってしまった。駅には近いので便利だが店舗なども増え、少しばかり賑わしくなってしまったのだ。
庭付きの一戸建てを持つというのは昔から理想の住居形態だった。しかしそれはまだ若い家庭の言うことで、芝生を貼ってブランコなど作り、休日には子供と一緒に遊ぶ、というようなイメージなのだろうが、歳を取って子供も家を出ると庭は手間がかかってかなわない。芝生は夏には毎週のように刈ってやらねばならないし、立木も落葉樹だと落ち葉の掃除が大変だ。
放置すればご近所迷惑となるし、人にお願いすればお金がかかる。
我家には栗と柿の木があって子供の頃にはそれで栗ごはんを食べたり柿もおいしく食べた思い出がある。
しかし、今となっては周辺環境を考えると安全に食べられない気がするし、両方とも落葉樹なので秋から冬には大量の葉が落ちる。毎晩、帰りに懐中電灯で照らしながら家の前の落ち葉を掃く。結構大変だ。庭師に頼めば2万円はかかる。出費だ。
歳を取ったら足も動かなくなる。亡くなった父親も晩年は足が痛いと言って二階には殆ど上がらなかった。
そんなことを考えると、庭付きの一戸建てはやめて上下移動のないマンションが楽ということになる。
セキュリティも玄関のカギを掛けるだけで済む。階段から人知れず落ちることもない。マンション、良いじゃないか。
ということでSUUMOや大手不動産会社のサイトをよく見ることとなった。
しかしどうだろう。マンションを含めた不動産価格は随分と上がっているように感じる。いま買ったら損になるのではとも思う。
これから少子化による人口減で不動産価格は下落するのではないだろうか。オリンピックまでは中華資本が日本の土地を買い漁り値段を釣り上げているという話も聞く。いまはタイミングが悪いのだろうか。しかし不動産会社に聞くのはあまり参考にならない。彼らは今の売り上げ、損益にフォーカスしているので、とにかく早く買えという結論ありきの返答にしかならない。
テレビでは空き家問題が良く採り上げられるし、老朽化し修繕費計画が破たんしてスラム化したマンション問題も良く見る。
しかし一方で価格が上がっているというのはどうにも話のバランスがおかしい。矛盾している。
一刻も早く探さなければならない人もいるだろうが、ここは注視しながらじっくりと様子を見るのが良いかとも思う。
しかし様子を見ているうちに自分も歳を取る。いざ新居ということになってももう寿命が残り少ないかも知れない。その後の損得なんて関係ないよ。こういう内なる声も聞こえる。
これでまた悩んでしまう。堂々巡りだ。こういう時に優柔不断な性格が仇をする。