歩く速度

Yahooの路線検索使うことが多い。どこかに行こうとすれば必ずと言って良いほどこれで調べてから出発する。経路は勿論のこと、運賃から乗車位置、果ては遅延情報までが表示されるので便利なことこの上ない。携帯もそうだが、一度実現してしまうとそれがなかった時代を容易に想像できなくなるというのはこの世の不思議の一つである。

就職したてのころ、定年間近の同僚が、昔はコピー機がなかったので大変だった、いまは便利になったというのを聞いてのけ反りそうになったが、そんな自分も当時、表を作るのにまずは罫紙に手作業で線を引いていた。表計算ソフトなどまだなかった時代だ。その後、CP-MというOSで走るベーシックでプログラムを書くようになり、MS-DOSで表計算ソフトのはしりとも言えるマルチプランを使うようになりその機能に驚嘆した。稟議書も改変されないようにボールペンで手書きするのがルールだったが、後の方で間違えると一から書き直しでは辛いのでカッターの端で紙の表面を削り取って修正した。まだ一太郎もワードもなかったのだ。

話が思わぬ方向にそれたが、Yahoo路線での設定条件の一つに歩く速度というのがある。
乗り換えの際の徒歩移動の速度が違えば当然のことながら乗り継ぎ電車が変わってくるからだ。

何も設定しないと、デフォルトの「少しゆっくり」という設定になるが、自分の場合は通常、それをもう一段階遅い「ゆっくり」に設定して検索している。

自分はとにかく歩く速度が遅い。いや、足や股関節が痛いなどの器質的な異常があるわけではなく早く歩くことが出来ないわけではないが遅くなってしまう。人混みが嫌、というより人波のなかで否応なく歩かされるのが嫌だ。そのため、まずはその波の一団が消えるまでやり過ごすことが多い。それだけで随分と時間がかかる。しかしそれで助かっていることもある。その詳細をここで書くのは憚られるが、集団のなかで移動すると避けられるものも避けられなくなるという、そんなことがよくある。

この間、友人と連れ立って猿楽町の神田教会あたりを歩きながら、最近精神的にも随分良くなったんじゃない?と唐突に聞かれた。

どうして? いや、以前より早く歩くようになったから、と。

確かにその時は気分も軽かったし、いつものし掛かっていたような重たいものもまるで最初から無かったかのようだった。あぁ、結局そういうことなんだと合点した。

しかしよく見ているものだと感心する。

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