逡巡のざわめき

以前の日記でも書いたように家を探しているのだが、いま住んでいるところはもう住みづらくなった。整理がつけばすぐにでも売ってしまいたい。勿論、先に新居を探してからでないと困る。しかし新居を買うのに今のところを売らなければならないことはない。

だから新居を探してからゆっくり売れば良い。そう思ってしまうのがなかなか決まらない理由だと自分でもよく分かっている。つまり動機付けが弱いとなかなか決断できない。本当にホームレスになるかならないかのギリギリに身を置けば普段できない決断も出来るようになるのかも知れない。

しかし、最近中古マンションを買った友人が言うには、一目見てピンとくる物件が必ずあるはずだ、だから逡巡のまま無理に買ってはいけないという。

この間も不動産屋に数件の中古マンションを案内して貰った。そこで四十代と思しき営業マンに「ピンと来る何かがないとお勧めしない。」と同じようなことを言われた。やはりそういうものか、ここ一年ほどで結構見て回ったがピンとくるものはなかった、いや、ピンの前段階のピョンくらいの物件はあった。ここは価格で逡巡している間に他人に買われてしまったのだった。

しかしそれほどの悔しさも感じなかった。ということは本当に欲しかった物件ではなかったということか。そんなことを考えているうちに、友人のいうピンとくる云々は不動産屋の言い方を単に真似ているに過ぎないのではないだろうかと訝しく思うようになった。本当にピンと来たのか。いや実は妥協して決めたんじゃないの?買った後で自らを納得させようとしてそう言っているに過ぎないのでは?などと考えてみればどうでも良いことが頭を巡り、肝心な物件探しがおろそかになっている。

実際のところ、ピンと来ないのは具体的にどんな家が欲しいのかがイメージ出来ていないからかも知れない。本当は駅近は煩くて嫌なんだ、出来ることなら隣の家が密接していないような広い敷地の一軒家。古民家風がいいな、しかし寒いのは嫌なので古民家風でも最新設備がいい。本棚を廊下から天井まで家中に張り巡らして図書館風にするか、乱歩よろしく蔵の中も良いかも。玄関は狭いと嫌だ。囲炉裏があってもいいな。茶室もあるといい。セキュリティは重要だから堅固なものを、壁や床は合板ではなく一枚板がいい、時代を経るごとに黒光りするような。防音性も欲しい、冬は日差しが充分入るように、ハザードマップもクリアしなければ、いや本当に住みたいのはトレーラーハウスだったかも……。

考えれば考えるほどよく分からなくなるのだった。
そもそも歳を取ったら一軒家は手間がかかるからとマンションを考えていたのではなかったか。

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